3番目のタワーは砂肝のような形をしていた。僕は疲れきってしまった。なぜか、疲れがどっと押し寄せてきたのだ。誰かに助けてもらいたい。クロイヌでもよい。誰かの助けが必要なんだ。
そう思えるほど僕は弱りきっていた。疲れのなかにさらなる疲れが渦巻いているようなものだった。世界はとても鈍く重いものに変わってしまったようだった。
誰かのささやく声がする。
「君はどこにもいない。だからこそ、世界の中にあなたがいる。そのことを忘れてはいけない。あなたの素晴らしい力があなたを逆に疲れさせているのかもしれない。何がわざわいで、何が幸運か、誰にもわかりはしない。あなたはあなたの世界を生きなさい。あなたはあなたの世界を行きなさい。誰にもわかりはしない」
鳥の鳴き声が聞こえた。タワーのアチラコチラにたくさんの巣を作っているようだった。僕はその声に耳を傾けようと努めると、何かこんな会話が聞こえてきた。
「あなたはあなたでしかない。だから、飛べる。あなたはできる。あなたは可能性を秘めている。あなたは世界の中心にいる。自信を持っていいんだよ。あなたは可能性の塊です。あなたは命のかけらです。あなたは大切な命なのです」
「そのことは、とても尊いことだ。だが、世界はそれだけで成り立っているものではない。そのことについては、わかるね?あなたは、あなたの世界を生きていて、私は私の世界を生きている。そのことが、あなたにとってどんな意味を持つのか?考えてみたことがあるかい?」
「きっと、世界は神で満たされているんだ。そうだ。そうに違いない。僕はそう確信している。知っているか?知らないか?一番の問題はそこだ。僕の中で世界はここまで来ているが、残念ながら、世界にあなたはいない」
言っていることの意味は何となく分かったが、なぜ、そんな会話を鳥たちがしているのかわからなかった。僕はタワーのなかにあるベンチに座りこんだ。
どのくらい時間がたっただろうか?目が覚めると目の前には薄暗い色のスーツを着た男が立っていた。男は化粧をしているようだった。ぶつぶつと何事か言っている。聞き取れない声だが、僕にはその男が嘘をついていないのがわかった。男をしばらく見つめていると、男はふらりとどこかへいってしまった。
僕の疲れは少しマシになっていた。世界が何となく違和感を持ち始めているような気がした。
次の瞬間うさぎ男ウザギの顔をした男が、僕の目の前に現れた。突然どこから来たのかわからなかった。うさぎ男は僕をじっと見て言った。
「君はどこにでもいるような少年だった。だが、旅に出た。君は今のように疲れきることは、私にはわかっていた。だが、君のなかにいろんなものがあるだろう。何か喜びに満ちたものがあるだろうな?と信じているかい?」
「あなたは誰なんですか?あなたは父と母の行方を知っているのですか?僕が知りたいのはそこなんです」
「君の両親は君というものを産むほどに、違う世界の存在だった。何か飛躍した踊りを楽しむかのようなものだ。君との会話には喜びがある。私の名前はウサギとでも呼んでくれ。君をクロイヌに言われて待っていた」
僕は驚いた。クロイヌの名前がここで出てくるなんて、と思った。