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僕の旅 5

 のぼりきってしまうと、下にはいろんな風景があった。家の風景空の風景。もう空は少しずつ日を落とし始めていた。

 そんな時、緑色のジャンパーを着た男が話しかけてきた。

「このあたりに、必ず人を蘇らせる薬があるという。知っているかもしれないから聞いてみた。どうせ知らないだろうけども。俺はこの辺りには詳しいのだが、まだ見つけられずにいる。だから、人を頼ることにした。だから、君に聞いてみた。君は何かを知っているようだな?俺のカンが、そう告げているぞ。生きていくことは楽しいかな?それともつらいかな?どちらにせよ、誰かを蘇らすのは大変だ。俺は俺の妹を生き返らせようとしている。妹は俺がまだ若い頃に病気で亡くなった。俺はそんな妹をいつも思っている。聞いたのが、人を蘇らせる薬の話だ。どうやって使うのかまでは知っている。死んだ人のことを思い出しながら、薬を飲むんだ。すると、死んだ人が蘇るらしい。ずいぶん長いこと俺はしゃべっているな。俺の力は知っているか?」

 この男は嘘をついていると分かった。だが、どの部分に嘘をついているのか、はまたもやわからない。いつだってそうなのだ。なんとも使い勝手の悪い能力だ。僕はため息をついた。男は何事もなかったかのように僕のもとから去っていった。きっと寂しかったのだろう。僕は何か異質なものをタワーの隅で感じた。それは、クロイヌの言葉を発するイヌの像だった。

 「お前はどこにも行かない。お前の見つけようとしているものは、どこにもない。すでにこの世界のどこにもないのだ。神はもいいないとある人が言った。皆それを信じてしまった。だが、俺は違う。君だって違うだろう?君はこっち側の人間だ。君は俺と同じ種類の人間だ」

 クロイヌの話は途切れて、気づくと日が沈み始めていた。僕はおじさんに電話をすると、今日はこのまま近くのホテルに泊まると告げた。おじさんは「わかった。無理するなよ」とだけ言って電話を切った。

 僕はゆっくりと歩き出す。探すと庶民的な宿がいくつかあり、僕はその宿の3軒目に決めた。なんとなくだけど、そこに何かあるような気がしたんだ。

 宿の受付はとても愛想の良い女性だった。「ありがとうございます。一泊だけでいいですか?」と聞いてきた。僕は何も言わず、一泊分の料金を支払い、もらったキーの部屋へ向かった。そこには、シャワーと清潔に整えられたベッドがあった。テレビもあり、テレビをつけると、戦争のニュースをやっていた。誰かが攻撃を受けて死んだという話だった。僕はシャワーを浴びて体を洗うと、ベッドに横になった。昔のことを思い出した。

 犬が追いかけてくる。どこまでもどこまでも。僕の背中をいつも犬は追いかけてきていた。その中で、巨大な機械が、動力は謎なものだ、が、うなりを上げて動いている。犬を寄せ付けまいと僕を守ってくれているようだった。

 僕はラジオをまた聴くことにした。東京のラジオがやっていた。人気お笑い芸人のラジオで、快活な話を聞いているが、なかなか笑えなかった。本当に父と母は、どこにいったのだろう?僕の頭をずっと考え続けてきた疑問が占めていくと、だんだんと夜の中に深く入っていって、眠ってしまったようだった。朝起きると朝の5時半だった。ルームサービスで朝食が頼めたので、頼んだ。僕はそれを食べながら、昨日の夜何も食べていないことを思い出した。

 7時ごろ宿を出ると赤いメガネをした女が僕に話しかけてきた。「あなたは何かを探している。あなたは何かを探している」

 僕は意味がわからずにこの女の人が何も知るはずはないと決めつけて、先を急ごうとした。次のタワーまで電車で15分くらいの距離だった。それは、昨日おじさんに聞いて確認していた。宿の受付の女性にも聞いていたので、さらに確かだろう。

 電車は朝のラッシュでぎゅうぎゅうづめだった。僕は疲れきって電車を降りると、3番目のタワーまで歩いた。

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