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ケン・リュウ「紙の動物園」を読んで

 涙してしまった。どこに涙したかといえば、母が異国の地で、自分の国の言葉を喋れずに孤独の中にいたが、子供(主人公)が生まれて、希望の中を生きていたが、子供は英語でしか母親と会話をしようとしなくなる。母親は中国生まれの中国育ちで、花嫁として、アメリカにやってきたという。文化大革命の影響で、肉親を殺されて、1人だけになり、香港の人買いにつかまって、暮らしていたが、花嫁を探していたアメリカ人男性のところに嫁ぐ。

 息子のそんな冷たい態度にもかかわらず、母親は癌で今にも死のうという時に、息子を就職活動のために大学に帰るようにいう。息子が帰っている時に、母は息を引きとる。

 それで、最後に母親がどんな人生を歩んできたか中国語で、老虎(ラオフー)という紙でできた動く動物に書いたのだ。そこで、息子への哀しみをこめた、訴え。どうして、話をしてくれないのか?母親の辛い心情を、中国語で書きつづっていたのだ。それを、もはや、中国語がわからない主人公は、観光客の1人に頼んで読んでもらう。親孝行したい時に親はいないというが、まさにそんな感じが出てくる物語だった。

 また事実であるとすれば、文化大革命は恐ろしい出来事だったんだな、と思った。中国人は、イエスかノーハッキリしないと殺されるから、ハッキリしているというようなことを聞いていたので、あー、こんな目にあえば、たしかにそんなところも出てくるのかもしれない。そして、そのイエス、ノーが、正解だった人のみが、今の中国を生きているのだろうか?と思うと、恐怖を覚える。

 私は何事もハッキリしない性格なので、時代が時代、世が世なら、真っ先に殺されていただろう人間だ。

 物騒な話だが、世の中には、人が人を簡単に殺すような時代もあっただろうし、今の世でなければ、私も殺されていたはずの人間だ。そして、さらに恐ろしいことに人を殺していたかもしれない。通り魔事件を知ったひきこもりの親が、ひきこもっていた息子を殺すという事件(のちに通り魔事件は、動機と関係なかった部分もあるらしいとか)の話をだれかがしていた。YouTubeの人だったろうか?だれが話したか覚えいない情報が心に残るというのも不思議なものだ。

 とにかく、私はこの「紙の動物園」で、ひどい人生を歩んできた母親の孤独や、つらさに共感できる部分もあったかもしれない。でも、結局わたしが泣いたのは、その日両親が出かけていて、さみしくて泣いただけなのかもしれない。本という隠れみのを使ってだ。

 私は私のことがよくわからない。私が本当は何を考えているのかも、よくわからない。ただ本を読んで涙した。その事実だけが残った。

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