バランジューの待つ広間へ。気配のする方へ私は向かっていった。バランジューは奥の広間で、本を読んでいた。生きている。私は生きている。そのことが密に感じられた。それが、この鬼バランジューの力の一部なのかもしれない。本人が語るところによれば、バランジューという名前だそうだ。バランジューという青い鬼は、私に気づいていう。
「なんだい?君は?勝手に入ってくる人はたまにいる。そういう人には丁重にお断りいただいて、帰っていただいているよ。あなたの目的はなんですか?」
わたしは思い出した。そうだ!地獄にいるという母を助けにやってきたのだ。
「母の居場所を探しています。何かご存じないでしょうか?何でも良いので、この世界の情報をください」
バランジューは目を細めて、にこやかに笑って言う。
「あなたは、ここにあなたの母がいるという。だが、その母はもう死んでいるのではないですか?その母はもう生きていないのではないでしょうか?私が言いたいのは、すでにあなたのお母さんは死んでいて、生きているあなたの触れられる領域にはないというのが、実際のところだと思うのです。違いますか?」
「違いません。だけれども、私の心は母が地獄でつらい目にあっているとしたら、私は助けてあげたいと思う。その気持ちは、私が生きていようと死んでいようと、母が生きていようと、死んでいようと、私は母を助けたいのです」
「その結果、あなたの大切な人の命が奪われたとしても?」
私は混乱した。まさか、私の現世にいる大切な人ミエルカが、危険にさらされているとでもいうのか?だが、それでも、今の母を苦しみから救いたい思いはまぎれもない事実だ。その気持ちに嘘はつけない。
精神を集中すると、バランジューの助けにより、ミエルカの姿が見える。ミエルカはただ機械的に私の手を振っているだけだ。ミエルカは私のことなどなんとも思っていないのだから。その悲しみと絶望に負けそうになりながらも、私は彼女を愛しいと思う。ああ、ミエルカ。なんとあなたは好ましい姿、形、色合いをしているのだ!
それとともに、バランジューに母の姿を見せるようにお願いする。
「だめだ。私は現世と地獄をつなぐ役割はできても、地獄と地獄をつなぐ役割はできない。だが、お前とともに、母を探してやることはできる。お前はとても熱心な人だ。そして、その姿に私は心を打たれた。良いだろう。このバランジューお前の仲間として、青鬼猫モードになって、一緒に旅をしよう」
バランジューの巨大な姿は青い猫になってしまう。「さあ、ゆくぞ」
門が自動で開いた。バランジューはやはりこの姿になっても頼もしい猫?だ。
「ありがとう。バランジュー。君は僕のかけがえのない友だ」
「ふん。そのお礼はお前の母親が見つかってから言うんだな」
そうして、青猫バランジューと私は地獄の次なる大地(バランジューを道先案内人として、進む)へ向かった。
「なんだ!あれは!!」
道の向こうから髑髏の怪物がやってくる。古代ローマの戦車のようなものに乗っている。馬の目は血走り恐ろしい形相だ。さあ!どうなる!この世界!!