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カオス12

 鈍い痛みとともに消えていく。この世界から、真昼の月が消えていく。私の中にある世界がどこか異質なものに変化していく。人々は太古を探し求める。だが、どこにもないような物語でしかない。変わりのない空から祈りのない海へといたる道。どこまでいっても、何もない平原の中を、私はどこへ進もうというのか?動きのふらふらとした中で、どこへ至ろうというのか?静まっていく赤い空とともに12番目の車輪がまわり始める。誰でもないかけらの夜に、静かに太陽は昇っていく。黒い太陽は、その暗さをまき散らしながら、進んでゆくのだろう。

 今こそ、ここにある世界を認めよう。今こそ、ここにある月をしずめよう。誰もが整えている。誰よりもシズクを愛している。私はひとつの魂を愛した。私というひとつの魂を心ゆくまで愛し続けていたのだ。どんどん良くなる、と私は私に言い聞かせる。どんどん良くなる、と私は告げる。どんどん良くなる、と私は信じる。大丈夫だ。この言霊は、どこまでいっても全力で私を守ってくれるだろう。ひそやかな空の中で永遠の歴史を形作るのだ。ああ、世界よ、あれ!ああ、世界よ、響け!

 私の中にあるマグマが私をつつみこんでいく。やはり狂っているのか?狂える火鉢のようなものなのか?どこにも出ていきはしない。誰にも、求められはしない。うれしさの中にひとつ世界がある。喜びの中にひとつ世界がある。繰り返しの中に様式美が生まれる。誰からも相手にされない魂よ。誰からも相手にされない人々よ。永遠なれ!永遠なれ!

 Sは話し始める。悠久の歌を。誰にとっても試練でしかない話だ。

「わたしは忌み嫌われる存在だった。人々から希望もなく、堕落の象徴として、見られていた。私は死んでいた。生きながらにして死んでいたようなものだ。私は誰かの助けを得ようともがいていた。だが、誰も助けにはこなかった。誰も妄想を事実と認めてくれなかった。私は戦う。私には私の正義がある。私は私を認めよう。私は私を信じよう。誰も私を救えない。誰も私を傷つけられない。天上にある花でしかない。私は天上にある花でしかない」

 歌い手はどこかへいってしまった。残されたのはSだけだ。Sは私に言った。

「もういいんだよ。頑張らなくていいんだよ。全て終わりにしよう。全てこの世の欠片としよう」

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