どこまで行っても、そこにあるのは虚しさだけだった。あらゆるものが、欠片として機能を続けている。めくるめく抽象の世界が、めくるめく終わりを告げている。私は1人ビルの中に立っている。空調がきいているらしく、ビルの中はあたたかい。周りにはたくさんの観葉植物が置いてある。どのようにしても、その姿はどこにもないようだった。私は決して底を見ないと決めたのに、なおも、その底は、果てしない世界の渦の中で、きわめて極論的な物語を提供しているようだった。自然さと無為さ、を兼ね備えたひとつの美をあなたは誰からもらおうというのか?人々は祈りはじめている。人々はなおも消えていっている。その世界の誰もいない場所から、誰かの居場所へと歩を進める。君をこそ、ひとつの答えとなせ、君をこそ、ひとつの終わりとなせ、と何度も繰り返し、石板が語りかけてくる。大きな首から大きな顔を取り出したような無意味さ、大きな世界から大きな現実を取り出したような無残さ。私は今日も世界を歩いている。その影はなおも、世界のただ中にあり、世界を閉じていく。
果てのないひとつの始まりが、私たちの時を止めるように動いている。何も記憶から薄らいだものを持ってはいない。人々は大いなる眠りの中に、大いなる世界を引き続きとどめ置いている。知っているのだろう。きっと、この世界が、大きなうつろによって、成り立っていることを。知っているのだろう。きっと、この世界が、大きな欠片によって、示されうることを。誰もが、生きている。誰もが生命の果てにある細微を見つめ果てている。その先に何があろうとも、消えていく世界はなおも、巨大な穴のようだ。しずくが一滴落ちていく、この泉の中で、何をあなたは感じとるだろうか?知っているのか?この世界が、いつか見た、あの夢のようだと。私は世界をJへと返す。私は世界をSへと戻す。私は世界をTへと渡す。私は世界をMへと移す。
すべてが移動の中にあり、すべてが空洞の中にある。世界は世界として、示されている。世界はその世界をどこまでいっても、狂いの花へといざなうのだ。Jは言う。
「あなたは、どこまでいっても、その火をはじくことはできない。あなたはどこまでいっても、その関わりの中で、生きていくことはできない。そうして、詩的な物語が始まっていく。あなたへ伝えたいのは、ただ、火はもうすぐ燃え尽きるの一事だ。あなたは火をまだ持っているが、その火はまもなく消えてなくなるだろう。私はあなたに世界を与えたい。私はあなたに残酷な世界を見せてあげたい」
いつの間にか、人々は静まり返っている。誰もが、口を開こうとして、開けない今、Sはなめらかな顔をなめらかな道にこすりつけるように頭を下げる。
「どうにかして、この頭を地中の中に埋もれさせたいものだ。なんとかして、世界をこの地中の中に埋もれさせたいものだ。ありがとう。あなたにただ感謝している。あなたは世界のひとつの答えを私に教えてくれた」
Tは叫ぶ。「まだ終わっていない。まだ何も終わっていない」そうして、世界は世界へといざなわれていく。
Mは静かに答えを待つと、答えのままにその仕草を終わらせる。
「もう終わったんだ。すべてもう終わったんだ」