頭痛がする。と、同時に大きなうねりのような恐怖が私を襲う。私は大きな地点に立っている。静かな海ぞいの街の片隅で、大地に支えられている。あらゆる溝が、全て満たされて、もはや溝にはまるものの余地はないような感情が押し流されていく。寒い日だ、と思う。今さらながらに冷たさを感じる。私は巨大な運航機を作るためにネジをしめている。バリバリバリと音のする作業の合間で、何か特殊な人々の始まりが音を立てている。
「君はどこにいるんだ?何をするために、ここにいるんだ?まだ何も始まっていない。まだあるべきものはここにはない。世界はそのままにかたどられている」
あたりに赤面した子供たちのような色のクリームパンが、何個も作られている。ベルトコンベアに乗って、運ばれていく。静かに、その妄想は運ばれていくのだ。私はそっと手を上げて合図する。妄想は奇妙な機械の形になって、私を追いかけ回す。やめるんだ。やめてくれ。と願いむなしく、彼は閉じていく。
「私のための物語を書こうとしてるのか?それを絵本で表現しようとしてるのか?無駄なことだ。あらゆる物事には無駄がある。だからこそ、尊いのだ。私は必死に食らいつこうと、無数の十字架のかかったような柵を見る。そして、私は巨大な世界をこねくりまわすだろう。大きな闇を見つめ続けるだろう。そして、世界そのものを遊びのない領域へと変えていくだろう」
そこまで言うと彼はどこかへ行ってしまった。まるで公園のハトが、いつの間にかいなくなっているように。また頭痛がする。ズキンズキンと痛みがやってくる。巨大な機械が迫ってきているようだ。私をまとめて改良しようとしている。それを、治療とも呼べるのかもしれない。だが、私はその答えを知らないので、今もこうして、生きている。彼はどこからか、私を取り出そうとつかんでいるが、私をつかみきれないらしく、するりと私と言う肉体は、私という魂はこぼれ落ちていく。そんな様を見ながら、どこまでも下っていく川を思い出す。力を下へ下へと導いているのだろうか?それとも、何物も世界から世界へと切り離そうと悔いているのだろうか?私たちの世界は決してひとつではない。私たちの導きは決してひとりでおこなうものではない。気づいてくれ、少年。その先にはマグマが燃え盛っていることに。気づいてくれ、少年。その先には針の山がそびえたっていることに。私はこのようにして、全てを失い、このようにして、全てを得た。Sはまだ寝ている。静かな夜とともに、Sはベッドの中で目覚めない。頭痛などないように。頭痛など存在しないかのように。