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異世界旅行記4

 あたりに虹色の川がある。私たちは、どこからともなく消えていく姿を待っている。私の隣にはまた”例のあの人”がいる。名前はHというらしい。初老の人だ。性別はわからない。男としての力を持ち、女としての力も持っている。感じるのはイメージの中だけだ。私は曲がりくねった道を歩いている。そこには、いろいろな草木が生えている。赤い花、白い花、黄色の花。道端に咲く花はすべて美しかった。そして、道は快適なほど良い下り坂だ。

 誰かが、泣いている声がする。クラスの中に1人だけ1人でご飯を食べるものがいた。はみ出しもののSだ。Sは自分がいじめられるのはつらいのに、他の人がいじめられている時は、誰よりも笑っている、ひどい人だった。こんな人間は誰も好きになるはずはない。みんな敬遠していた。唯一、Kという友達だけは、熱心に誘ってくれたが、他の人はSのことが嫌いだった。クラスメイトのほとんどもSを嫌っていたはずだ。他のクラスメイトがいじめっ子たちにからかわれると誰よりも笑うSは、人間としていやな部類の人である。その中で、愛想笑いして生きてきたわけでもなかった。くだらない話を誰かとするわけでもなく、無口に閉じこもって生きてきた。そのSはひとりぼっちになって泣いている。

 私は離れたところから、Sを見て声をかける。

「何がそんなに悲しいんだい?君が他の人にしてきたことを、他の人は君にしているだけじゃないか」

Sは振り向いて、泣き止んだ。私の方にゆっくりと歩いてきて、立ち止まる。

「でも、私はそんなにひどいことをしただろうか?私はそれほどひどいことをしただろうか?私は私が狙われずにすむことを喜んでいただけなのに?私は誰も助けはしない、それは、誰も私を助けてくれないからだ」

 私は首を振ってSを見る。少し興奮してきているようだ。私は注射器を取り出す。Sは手を差し出す。腕をまくる。私は注射器で薬剤を投入する。ドクリドクリと音がした。Sは唇をふるわせ、小刻みに手を動かしている。落ち着きなくあたりを歩き回りはじめる。「うん。問題だ。私は薬物に頼らないと生きていけないのか?そんな現状にどうにかならないものか?」と、Sは大きな声で叫ぶ。その瞬間、Sは黄色の花に変わってしまう。

私は消えしまった人影の後に残った植物を見つめている。手にとり、集めるとオレンジの花も光り始めた。そして、黄色の花と共鳴している。あたりに高い音が響く。オレンジの花は赤い花へと変わってしまった。その花びらのいくつかはオレンジであり、黄色であった。グラデーションのかかったような花の中で、私は1人また歩き出す。道はまっすぐとどこまでも続いているように感じられた。先には巨大な墓場がある予感がする。足を踏みしめる。私は何度目かの冬をここでむかえるだろう。

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