わたしは花を探しに空間のあちらこちらを歩き回る。道は柔らかすぎるくらいで歩きにくい。たまに弾力のあまりに、一回転しそうになる。手を差し出して、何かを感じようとする。どこにも花なんてないんじゃないか。わたしはひとつの白い物体を見つける。これは、わたしが子供の頃大事にしていたキャラクターのアクセサリーだ。なぜ?こんなところに?
太い男の声がまた空間に響く。
「君の求めているものは、君の求めていないものの中にある。君の探しているものは、君の探していないものの中にある」
わたしは太い男が、遠くから大音量で話しているのを不思議と聞こえている。
わたしは独り言のように1人話し出す。
「わたしはこのキャラクターをとても大切にしていた。わたしはこのキャラクターを肌身離さず持っていて慈しんでいた。あれは、わたしがはじめて知った愛だったのかもしれない。あれは、わたしがはじめて感じた人への好きという感情だったのかもしれない」
太い男は地獄耳らしい。また声が聞こえる。
「あなたはあなたでしかない。そう。あなたは、ひとつの答えを持っている。そのためのひとつのぼんやりとした不安を抱えている。あなたは、知っている。あなた自身がひとつの世界だということを。あなた自身が夜の王だということを」
わたしが夜の王?わたしは1人奇妙な考えにふける。あのキャラクターはいつの頃からか、わたしの中からなくなった。わたしはあのキャラクターを忘れてしまったのだろうか?それとも、なくなってしまったのだろうか?ここにないものは、いずれ忘れ去られる宿命にある。なんと、残酷な事実だ。わたしは白いキャラクターを触る。白いキャラクターから、声がする。
「ありがとう。大事にしてくれて、ありがとう。わたしはあなたに愛されてとても嬉しかったです。わたしはあなたの愛を受けて、とても喜んでいました。そして、わたしは幸せな生き方ができました」
キャラクターはそういうと光り輝き始めて、ひとつのピンクの花になった。これが、あの太い男の言う花なのだろうか?わたしは1人で考えながら、花をとって手に持った。花の光はおさまり、あとには、ピンクの花が残った。