どこにもない世界がそこにはある。白い砂漠が世界をつつんでいる。巨大な滝のような男が1人現れている。
「ここにいるのは、わたしだ。1人の人であるわたしとしてここにいる。ここは、どこかわたしにもわからない。それでも、わたしは全てを知りたいと願うだろう。夜はまだ、欠片さえわたしていないというのに」
ついになる女が答えを返す。りんとした澄んだ声は遠くの森林まで届くほどだ。
「あなたは、そこにいるだろう。そして、あなたの世界を見つめるだろう。知っている。わたしは知っている。あなたがすべての元となる物語の始まりだと。あなたは告げるだろう。何かがあって、何かが終わることを。そして、その世界が新しい息吹を持つことを」
男は短刀を取り出し、果物を切り分ける。女はそれをみながら、きれいな葉を用意する。果物が葉の上にのせられると、2人は感嘆の声を上げる。「おお!」「うん!」そこから、2人の食事が始まり、果物はらせんの粒のように、胃袋の中に入っていく。2人はにこやかにお互いを見つめ合い、にこやかに声をかける。
「わたしは知っている。ここに対となる世界があることを。そして、何もここにはないだろうこと。この世界には何もない。だから、わたしたちはこの世界から出なければならない。すでに3つ目の門は開かれている。わたしたちは進まなければならない。満ち足りた世界をそのものとして、生きなければならない。夢物語をすべて正夢にしなければならない」
女は言う。
「ここまできて、世界があることに感謝している。まだ、この先には生きるべき魂が、横たわっていることに感謝している。わたしは4つ目の門を開く。そこに鍵はかかっていない。そこの、扉はわたしが開ける。だから、あなたは狩りに行きなさい。そのための腕、そのための足なのだから」
「あなたはわたしを苦しめる。わたしのいくべきところはここではないというのか?わたしはここではない道の場所で生きろということか?昔、開拓に行ったものは、皆帰ってこなかった。皆死んだかもしれない。わたしは恐怖する。道の希望の先にある道の険しさにだ」
「そんな夜もあるでしょう。そんな昼もあるでしょう。わたしたちは世界から孤立しています。それでも、はっきりと世界に足をつけている。そのことが何よりも大事なのです。行きなさい。そして、その世界を体現しているものをつかまえてきなさい。あなたは、そうして、はじめて1人の人になれるのだから」
男は知っている。自分が死ぬことを。男は理解している。自分が限られた存在であることを。男は今日を限りにあらゆるものとの絆を断ち切らねばならない。そんなことを知ってか、知らずか、わたしはあなたを整える。わたしはあなたを鎮める。ふいに出てきた主人公的な観点に、あなたは驚くだろう。どこまでいって、そこにあるのは、混沌とした世界なのだ。