×

何をお探しですか?

キーワードを入力して Enter を押してください

コンテンツにスキップ
← トップページへ戻る 【小説、詩】

わたしたちという庭の木(33)

 わたしは似ているのかもしれない。過去ここで出会った人に。わたしはぼんやりと考えて、なおかつ、考え抜こうとして、疲れてしまう。わたしは今ここにいる、それだけで、十分な事実をかみしめている。わたしは自分の特徴について考えてみる。強い性格ではなく、どちらかというと弱い性格。何をもって、弱いとするかは、わたし自身の価値基準によるので、どうしようもない。この弱さは、何か物事の境界そのものが、どこかへ行ってしまうような感覚である。わたしとものごとの境界が、どこか、非常にあいまいであり、悲しみに満ちているようでもある。わたしは生きていることに疲れ果てている。ただ、この疲れをどこにぶつけたらいいのだろうか?わたしは静かに夢へと送り出されていく。わたしは静かに鏡の世界へと呼び出されていく。知っているだろうか?あの日、わたしの唇は乾ききっていたことに。知っているだろうか?わたしの体内の奥で何かが胎動したことを。わたしは混乱している。それとともに、あなたの混乱にも伝染していくようだ。苦しみさえも、どこかに行ってくれ、と願う。薬のようなものは、どこにもない。あるのは、闇の中のほのかな月そのものだ。わたしは夜へとつながっていく。わたしは空へとつながっていく。どこにもないその世界の果てに、何か、ゆるぎないものが、あると信じているからこそ。わたしはわたしから世界を包んでいく。わたしはわたしの中から世界を広げていくのだ。どこまでいっても、そこは遠い空の果ての出来事のようであって、わたしはいつでも、その鎖に似た虹にからめとられている。わたしは世界そのものではあるが、わたしは世界の一部ではない。限定された世界そのものから、わたしは飛び立とうとしている。どこまでいっても、そこには夜がなく、ただ、月のみが浮かんでいる。

 わたしは空の暗い明かりのグラデーションをじっと見つめている。その陰で、何かが動き出しているのが、わかる。より、はっきりとした形である。より、はっきりとした物語である。ここから、世界のうちからうちへどんどんと世界が詰まっていく。どんどんと世界がぼんやりとした海へと変わっていくのだ。どこまでいっても、どこまでいっても、そこにあるのは、ただの風景のようだった。わたしはあなたに問いかけようとして、少しあくびをする。眠さからではない、退屈だからでもない。何かが私にあくびをさせている。それは、はっきりとわかる。唐辛子を食べれば辛いってことぐらい当たり前のことに思えた。わたしはわたししかいない世界をずっと過ごしてきた。私の中にいるのは、わたしのみである、そのことにきづいてから、わたしは空の海へともぐっていった。そこにあったのは、強い鏡の世界だった。わたしは鏡を通して、ふたつになり、さらに4つになった。そして、いつしか本体そのものは消えてしまい、偶数が、奇数になった。わたしは反射した自分を見つめて、何を思ったのだろうか?そこに残ったのは、わたしの幻影だけだった。そこに残ったのは、わたしの光のみだった。影は影でしかなく、どこにもいかない。わたしのなかにあふれた愛の力は、どこかへいこうとしている。何もない夜の空に星空がパッと浮かんで、消えた。夜の語り部の1人が私にささやいた。

「あなたは、あなたでいいんです。あなたはあなたのままで、いいんです。あなたはあなたを愛します。あなたはあなたにかえりなさい。そして、その夢の中で、どこまでいっても、尽きることのない無限の愛を感じるのです。それが、ひとつの答えなのです。あなたと世界の。世界と私の。世界そのものの答えなのです」

 わたしはゆっくりと体を持ち上げる。空の彼方へと浮き上がっていく体をどこからともなく見つめているのを感じる。あなただった。それは、間違いなく、あなただったのだ。優しいまなざしの中に、あなたは、わたしにすべての愛を注ぐ。その中で、わたしはゆるやかに天へ、天へ、と向かっていく。わたしを離さないで、わたしを離すと、わたしは遠くへ行ってしまうから。わたしを放り出そうというわたしが、わたしの中にある最高の世界を一つの物語として、その姿を見せようとしている。どこからか、声がする。あなたはあなたを愛しなさい。あなたはあなたを愛しなさい。2度繰り返された声の中にあなたを感じる。誰かの世界から、単に豊かな平原へと至る道があるはずだ。どこまでいっても、そこは楽園しかない。どこまでいっても、そこは、愛しかない。

コメントを残す