いろいろな問題が頭の中から浮かんでは消えていく。月なみな表現で、すべてが世界を変えていく。わたしたちは、どこにいるのだろうか?「ここはどこだ?」と少女に聞いてみる。少女は確かに近くにいる。気配は感じる。わたしの数メートル以内にいるだろう。その息づかいを感じることもある。だが、まったく感じないときもある。わたしから離れたり、近づいたりを繰り返しているのだろうか?少女は何も答えない代わりに、奇妙な周波数をもった声をつむぎだす。なんとなく意図はわかる。だが、どの言語でもなく、違う国の言語でもない。どちらかというと、違う”世界”の言語のように感じてしまう。彼女はいったい何者だろう?とずっと考えなければいけなかった問いに改めて直面する。彼女はわたしを殺そうとした多くの人間を殺したはずだ。そのことによって、罪悪感はないのか?私のように私を殺そうとしたため、命を奪われても仕方がないと思いきれただろうか?その問いを彼女にぶつけたことはない。「お前のためだった」と言われるのが、怖いのかもしれない。わたしは過去に人を殺したことはない、はずだったが、どうやら、何か異質なもの。わたしが誰をも殺していない確信そのものが、揺らぎ始めていた。あの晴朗とした空のような純粋な私自身への信頼が今ではゆらでいる。わたしの記憶はとても薄っぺらく、とても現実性を欠いているものだ、と最近気づき始めた。わたしはきっと、誰かに記憶を書きかえられてる。わたしはきっと、今の私が持っている記憶以外の記憶を持った誰か、なのだ。そのことが真実であるようにどんどんと証拠が積み上がっていく。わたしの指の傷はどこでできたものだ?それにこたえる記憶はない。このようなえぐれた深い傷を私は記憶の中で忘れ去ることができるのだろうか?人間にそれは可能な技なのだろうか?現実は、なお私を苦しめる。わたしは忌み嫌われる子供の1人として生まれたはずだった。しかし、なんらかの理由で、それが、、、。いや、なぜそもそも忌み嫌われる一族というものが存在しているのだろうか?私たちは、なぜ忌み嫌われるのだろうか?そのことについて、出会った男に聞いてみようという気になった。ここは、きっと忌み嫌われる者たちの生まれ故郷である土地だ。なぜなら、私を忌み嫌うものがいないのだから。