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世界の果てまで行って(23)

 わたしは眠っている。人々の祈りの声が聞こえてくる。低いゆっくりとした声が、集落の中を突き抜けている。そこには、おごそかな厳しさと、未来への確かな希望が存在している。ゆるやかな水の流れはやがて大きな湯の流れにきりかわっていく。何よりも何よりも美しい景色がそこにはある。白い大地に白い植物白い海。何よりも、美しい景色が、やはり、そこにはある。人々はわたしを”価値のないもの”と呼んだ。わたしは、その考えにとらわれて自分で自分を死に追いやるところだった。そこから、救ったのは声だった。誰かの声。遠い昔わたしに関わったことのある人の声。誰よりも誰よりも愛してくれた人の声。誰よりも誰よりも愛している人の声。過去と現在が交差して未来が生まれてくる。誰よりも美しい景色を、その声は評価する。そして、わたし人をも評価する。

「あなたはすばらしい。あなたは素晴らしく価値のある存在だ。他のすべての存在とともにあなたは価値を持っている。その存在だけで、あなたは限りのない価値を持つ。だから、自分を責めないで。だから、自分を傷つけないで。あなたを愛するすべての存在よ。目覚めてくれ。声が聞こえる。あなたを呼ぶ声だ。あなたを呼び覚ます声だ。誰よりもあなたを愛している声だ。その声の本質を聞くのだ。誰よりも聞いてくれ。誰よりも美しいその言葉の響きを、あなたに聞いてほしい」

 わたしは疲れとともに眠りに入っていく。まただ。腐食したものたちからの、病がわたしを襲おうとしている。それでも、わたしは誰よりも尊い。誰よりも価値のあるわたし自身にとってのわたしを見つめる。高くあることは価値のないことではない。低くあることこそ価値のないことだ。わたしは高さや低さの問題を真実見つめ続けている。そして、やがて多くの鳥たちは気づくのだろう。そこに価値判断そのものがない、ということに。わたしは落ちる冷たい水を感じて、離れきった寒さとともに、街を歩く。そこに人々の姿はない。どこにも行かないで、とわたしに告げる罪人。だが、高貴なるものはどこにもいない。そして、存在さえも忘却していくのだ。あらゆる仕組みの中を、あらゆる自然が飲み泳いでいく。力強く。誰よりも力強く。

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