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← トップページへ戻る 【小説、詩】

世界の果てまで行って(19)

 わたしは歩いている。山の上に大きな建物がある。そこを目指して、坂を登っている。斜面は石つぶてが、ありつつもわりあいになだらかである。右足。左足。また右足。また左足。1・2・1・2繰り返しのリズムを刻む。どんどんと山の上に体を運んでいく。どんどんと山の上の建物がちかくなってくる。何か音がする。誰かの声をスピーカーで流しているような音。ところどころ、わたしの横の少女が表情を変える。どうやら、言葉がわかるらしい。静かにわたしは、形になる物語をつかもうとした。だが、わたしの手の中から、抜けて遠ざかっていく。どこからか遠くなっていく。どこからか終わっていく。静かに通り抜けていく。少しずつほんのわずかに動いていて、その中をくぐり抜けている。

 わたしはどこまでいってもぼんやりとした空を見上げる。建物には何もなく、誰の気配もない。ただ、建物が何かを目的に作られて、その目的を果たし終えたような哀愁が、中には満ちていた。どこまでいっても、空は明るく、どこまでいっても、夢は弾け飛ぶ。中から外へ。どこからか、空が降ってくる。私たちの哀悼を、なんの涙ととらえようか?わたしを知っているか?あの日のわたしを?あの日、わたしは。誰よりも誰よりも、涅槃にいたる。しずやかに眠る。悲しみの中を踊る。踊り疲れて眠る。そんな循環を、わたしは少女とともにめぐるのか?確かにそこにある、物体。確かにそこにある、朝。わたしは、涙を流し、ここにある物語をつかもうと手を差し出す。空をきる。かわりばえのしない人間たち。行進は続く。更新は続く。

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