わたしは歩いている。遠くから汽笛のようなものが聞こえてくる。歩いていく。道には何ひとつ落ちていない。ここは、どこなのだろう?遠くに景色があるように見えるが、実際にその景色が何を指しているのか、はわからないままだ。また声がする。子供の声だ。
「つかれたの。もう、とてもつかれている。あなたもおなじ?わたしはここで眠る」
「眠った先に何もない。だから、起きてくれ。わたしのために起きてくれ。わたしは今あなたを必要としている。あなたが目覚めて、わたしの隣にいてくれることを何よりも望んでいる」
「わたしはあなたを望んでいない。世界はわたしを望んでいない。わたしも世界を望んでいない」
「世界はあなたを望んでいないだろう。だが、わたしはあなたを望んでいる。私の願いを叶えるために、あなたはここで起きて、目覚めていなければならない。漆黒の闇はやってきても、目がくらむほどの光はやってこない。それが、世界だから。それが、あなただから。それが、わたしだから。知っているでしょう?あなたはわたしであることを」
そして、ひとつの炎の魂が、強烈にゆれて、ひとつの玉になる。ぼんやりとした空間がわたしの中に入ってくる。そして、色とりどりの、花を咲かせていく。赤、緑、紫、白、青。葬送のための花が送られていく。わたしの中にいた、あの人間を憎むものが、ついに旅立ったのかもしれない。わたしの中にいた人を恐れるもの、が、すでにはるか彼方の世界に走り去ってしまったのかもしれない。喜びの中に湖を眺める。そこには、あたたかな水が流れている。誰もが、笑顔でにこやかにわたしを見ている。わたしは硬い表情で人々を眺める。まだ過去はやってこない。まだ未来はここまでだ。