わたしは何も持っていないはずだった。何も。だが、なぜかわたしを守ろうという人間が現れた。わたしをなお生きる大地へと導くものとして?それとも、わたしを地獄へ導くものとして?すでに、わたしに関する噂は回りきっているらしい。街の警備は強化され、何度か賞金稼ぎの人間たちに襲われもした。彼らはいう。
「お金が得られる。それは、どういうことか、わかるか?嫌われるものよ。わたしは家族と共に安住の地が得られるのだ。そのために、わたしの手にかかって死んでくれ。どうやら、お前はすでにコトキレている。そう。お前はもう死んでいるのだ。そして、もうお前の帰る場所などどこにもない。この前、お前と同じ一族のものを見た。裁判にかけられて、死刑になった。1人の女だった。だが、噂では実は女が逃げ出していて、手引きしたものがいるってね。だから、皆そうでないと証明するために、お前を誰も助けたりはしない。誰もがお前を人間たちの輪の中に入れることはない。だから、あきらめて、わたしのために死んでくれないか?何もしないだけでいい。その少女がお前を守るんだって?よく言い聞かせるんだ。少女はお前のいうことは聞くはずだろう?無駄だって?そいつは奇妙な話だな。まさに忌み嫌われるものらしい話だ。何もかも無茶苦茶で、何もかも背徳的だ」
わたしは生きることについて、消極的な態度でいたが、少女や人々はそんな生き方をゆるすまいと、さまざまな判断をしいる。何か記憶がうずく。心の奥底に眠っていた記憶がうずく。わたしに昔大切な人がいたような記憶が意識の表面に出てきた。笑顔?誰かの笑顔だ。わたしに向けられたものか?忌み嫌われるもののわたしになぜ笑顔を向ける人間がいるのか?同じ忌み嫌われるものか?いや、違う。そうではないと感じる。証明するものは何もない。ただ、そう感じるだけである。