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わたしたちという庭の木(12)

 わたしは歩いている。健やかな風がわたしの胸を駆け抜けていく。遠くに町が見える。きっと誰もいない町だ。しばらく歩き続ける。夜も昼も歩き続ける。町に着くと、誰の姿もない。

 誰かがつけた火がまだ燃えている。料理を作ろうとした人でもいたのだろうか?猫が1匹姿を現す。

「ここにあるのは町だろう。だが、この町はあなたのための町だ。わたしはあなたを生かすためのひとつの存在としてここにある」

 最後の前から最後の後ろへと。門の前から門の後ろへと。私は町中を歩き続ける。誰かの描いた落書き。1人の子供ともう1人の大きな人。きっと父親か母親なのだろう。2人は遊んでいるように見える。だが、何をして遊んでいるか、何もわからない。

 街の中心部には噴水があった。そこに君が座っていた。髪は黒く生命力にあふれる。鼻は形を整えている。口はにこやかな笑みを浮かべている。耳は誰よりもモデル的だ。つまり、芸術的な形をとっている。わたしは君に声をかけた。君は言う。

「よくここまできたね。君はいろんな場所を抜けて、ここまでやってきた。最後のあなたをわたしからやってくる息吹ととともにつつみこもう。あなたは素晴らしい。あなたはわたしをいつも助けてくれる。わたしもあなたをいつも大切に思っている。この町は、あなたのために、あなたの寂しさを埋めるためにここにある。でも、悲しまないように、みんな隠れている。君の友達はみんな君を思っているけれども、君を驚かせたくないんだ。だって、君にとって、君を思っている人がいるなんて、信じられないだろう?」

 ワタシハウナズイテタッテイル。

 すると、君はわたしをベンチまで案内して腰かけるよううながしてくれる。わたしはまた座って眠りに入る。深い深い眠りに。近くで焚き火の燃える光。焚き火の燃える音がする。夢の中で、皆が出てきて、わたしを心配そうに見つめている。きっと、この夢は人々をいやすものではなく、わたし自身をいやすものなのだろう。

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