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← トップページへ戻る 【小説、詩】

わたしたちという庭の木(8)

 わたしは歩いている。暗い闇の中を、地面はわたしを前へ前へ押し出すように動いている。つられてわたしも前へ前へ動いていく。冬の寒さが、あたりを包んでいる。わたしは暗闇の中をずっと進んでいく。しばらく歩くと道の先に光が見えてきた。どこだろう。わたしはうれしくなった。喜びの中から、静かな声が生まれる。ありがとう。光がどんどんと近くなる。わたしの気持ちもどんどんと高揚する。ふと暗闇の中に紅葉が、かすかに見えた気がした。

 光にたどり着いたとき、わたしは知った。ここにあなたがいることを。

「やあ!よくきたね。ここは君だけの世界だよ。なんでもあり、何にもないとも言える。さあ!僕と一緒に何かしたい?それとも1人でいたいかい?」

 わたしはいう。「海が見たい。波の音がする海岸で海が見たい」

 そういった瞬間にいつのまにか、そこは温かな海の海岸だった。波の音がザザーザザーと繰り返し反復している。あたたかな日光がわたしを照らす。

 あなたは隣(少し離れている)に立っている。わたしと同じ方向を見て、わたしと同じように海を見て、流れこんでいる。自分のうちへ、うちへと記憶を流しこんでいる。

 まもなく水たまりは池になって、湖になっていく。そして、目の前の海のように育っていく。

「君は生命の喜びを誰よりも感じることができる。自分のできることは自分でコントロールして生きていくことができる。それでいいのさ。君は君の選択の範囲内で、人との合意を得ながら、うまくやっていくことができる。何も言わずにしんどい思いするなら、自分を主張してしんどい思いしたらいい。それが、君に与えられた使命だよ」

 わたしは君の手をとり、優しくにぎりしめる。君の手はとてもあたたかかった。びっくりするほどに。

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