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← トップページへ戻る 【小説、詩】

世界の果てまで行って(6)

 どこまでも続く荒野の中に1人わたしはいるような心持ちになった。実際いるのは、海の近くの村。船を出してもらうよう頼んでみるが、なかなか難しい。

「どこまで行っても、この先には海しかない。わたしは忌み嫌われるものを海の果てに運ぶのはかまわないが、わたしは忌み嫌われるものと一緒に海賊に襲われてしぬことはいやだ。わたしの家族までが、わたしが忌み嫌われるものと一緒に死んだ人間として、ののしられるだろう。わたしはそんな人生の終わり方は、不快である。おまえは忌み嫌われるものとして、自分で死を選ぶのだ」

 そう言って、船乗りの男は短刀をさしだした。わたしは夜の中で、じっと黙っていたが、男はそのまま家に帰ってしまい、短刀だけが残された。わたしは自分が自ら命を断つという選択肢を考えた。だが、その先にあるのは、虚無でしかない。つらさや、痛みを肯定的にとらえる生への希望がわいてきているのを感じる。希望のある生ではなく、生きること、苦しむことへの肯定的な感情だ。人間は苦しむために生まれてきたんだよ、と昔教会の主導者は言った。その主導者が忌み嫌われるものであったかは、わからない。ただ、その主導者は苦しむことをすすんで、引き受けているようだった。自らを苦しめる。その目的は自らを他者のための人間に作り変えることだった。その道は歩まないと決めていた。少なくともわたしはそう決めていたのだ。

 少女はいう。

「もし、あなたが自分自身であなた自身を傷つけようとしたならば、わたしはあなたを止めて、その腕をこの鎌で切っただろう。あなたは幸運だ。考えてか、考えずにすんでいるからか、わからないが、あなたは最上級の幸運の星の元に生まれついた忌み嫌われるものなのだろう。わたしの姉はある人物に殺された。その人物はもっとも姉が愛した人物であり、姉を最も愛した人物でもあった。狂気が人を変えた。そして、その狂気は、今もなおこの大地にひざまづく」

 少女はそう言って、鎌を3回振り回した。道にある草と鬱屈とした空気が少し切れたようだった。

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