わたしは街を歩いている。人々もまた街を歩いている。太陽が雲から出たり入ったりして、変化の続く街をよりいっそうきわだたせている。駅の近くで友人を見かけた。声をかけようとすると、友人は足早にどこかへ入って行った。古びたビルのようだった。追いかけようか、迷ったが、やめておいた。わたしは散歩に街に出てきただけなのだ。駅を通り過ぎて、二つ目の信号の角を西に曲がる。公園の方角だ。今の季節はパンジーが咲いているかもしれない。いや、花が咲いているのは、公園ではなく、公園の近くにある家の庭だったかもしれない。わたしは歩きながら、過去の記憶をさかのぼる。だけれども、場所の詳細な記憶がどうしても出てこない。
わたしが公園がいると思ったところにもう公園はなく、花も咲いていなかった。わたしはかつて公園だった土地。今は2階建ての建物がある場所で、空を写真におさめた。シャッター音がして、スマートフォンに写真が保存される。さあ、この写真をSNSにのせて、またネッ友と他愛のないやりとりをしようか。家に帰ると、誰もいない。だが、やはり、何かがいる気がする。奇妙な音楽が流れている。隣の人が鳴らしているのだろうか?とにかく疲れたので、横になる。もう、大丈夫だ。と、感じる。
わたしの隣にいる誰かも同意してくれる。
「そうだね。もう大丈夫だよ」