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← トップページへ戻る 【小説、詩】

空白のイデア(34)

 方向の定まらない着実な一歩と表現したほうが良いだろう。

もはや物語は大きな破綻をきたしカオスへと収束しつつある。どこへ行った?佐藤?佐藤の現在位置を探る。佐藤は山奥のある施設で介護を受けながら生きている。

N教団の教祖として、弟子で後継者のルーは、すでに次の世代への教団体制の移行を進めつつある。偉大なる始祖佐藤教団名レアは、大きな人生の終わりを迎えようとしている。4つのレアの宝物が寝室には置かれている。神聖な修行の地ダルアーで、神にさずかった石。その石はどの時間帯へでも、触る人間を連れて行くという。

 何かまとまりのない終わりへと佐藤はぼんやりと感じているものを放出しようとしている。何もかもがむなしく遠のいている。レア、佐藤なるものは、すでに終わりへの道を進んでいる。佐藤の最後の遺言が、聞こえ始めている。「うーわーうーわー」佐藤の子どもたちが、うなりはじめる。踊りはじめる。少しずつ眠りに入っていく私たちのかぎりのない始まりを!見て見てください、と祈り続ける後継者のルー。

熱が胴体を伝わって、丸く静かに震え上がる。止めたものはどこにもなく、動かすものも、静かに腹から落ちていく。どこまで行っても、そこにあるのは、愛という名のミラー鏡なのだ。美しい緑が広がる山奥で、消えていくひとつの命。消えていくひとつの祈り。佐藤は一瞬正気に戻っていう。「よくやった。よくやったさ」そして、呼吸が止まり、意識も止まる。脳の機能が失われていき、心臓もやがて動作を止める。

 佐藤、レアは死んだんだ。ここから、はじまる新たな物語の駆動力を予感させる。列車が駅から走ってくるような質量の高まり。飛行機が飛びたつような轟音。騒げ、うなれ、世界よ!

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