佐藤はスズキの背中を見る。大きく、どっしりと厚みがある。
私はこの男についていっている。だが、この男は、どこに行こうとしているのだろうか?私には皆目見当もつかない。鈴木は足早に(ギリギリ佐藤がついていけるような速さで)先へ先へと歩いていく。
「佐藤さん。見えてきましたよ。ここが、あなたの奥さんの墓のある場所です。大いなる泉の原。大泉原墓地公園です。こんな夜中になぜ、私はこの男に連れられて、ここにいるのだろう?とあなたは思っている。そうですね?隠さなくてもわかります。あなたを奥さんの実家から連れ出して、2日かけて歩きました。あなたは墓がどこか知っているはずだった。だけども、そこに今墓はありません。ここにうつしました。というより、そもそも墓そのものが必要なかったのです」
佐藤は理由がわからす問いかける。
「どういうことです?鈴木さん、あなたが勝手に妻の墓をここに移したのはまだ納得できるとしても、墓そのものが必要ない?そのような死者を冒涜するようなことを言ってはいけないですよ。いくら私とあなたの仲とはいえ、さすがに許せない気持ちになります」
鈴木はだが、佐藤の非難に微動だにせずに答える。
「奥さんは生きています」
佐藤は唖然とした。だが、たしかに、この私の目の前で息を引き取ったはず。