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空白のイデア(15)

 まだここにある姿を妻だと認識するのは難しい気がする。鈴木はすでに佐藤の妻と同じものになっていた。雰囲気も感じるものも、すべて妻だった。それでいて、鈴木らしさも合わせもっている。髪を以前よりも伸ばした鈴木。妻よりはまだ短い髪の毛が、風にゆれる。そして、鈴木は言うのだ。

「ありがとう!今私はとても幸せです。2人の愛する人と一緒になっている。1人とはまったくの内的なつながりをもち、もうひとりとは、外的なつながりをもっている。私はうれしい。もはや、冗談ではなく、精神は肉体を超越していくのだから。そして、それをあなたにも求めたい。そして、その感覚をあなたはどれほど究めようとも、あなたはあなたのままでいてほしい。すなわち、あなたは佐藤真治なのだから。まぎれもない、ここにいるあなたこそが、何者でもない唯一のあなた。今ここにいる過去であり、今であり、未来である。そのすべてを束ねて、ひとつの宝物ができる。それが、あなただ。あなたは私たちの希望。あなたは私たちのいやし」

 そうか。と佐藤は思った。私はすでにここにあって、ここにないものを一緒にふくんだ存在へと挑みかかっていたのだ。その結果、私たちは3人の結びつきを今までになく強くした。ありがとう、と佐藤は思う。この結末はきっと、全ての人類にとって、明るい結末なのだから。

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