佐藤は驚いた。亡くなった妻の妹と名乗る女性が訪ねてきたのだ。
「佐藤さん。妹がお世話になっております。それと同時にありがとうございます。あなたは神のような人だ。妹に人としての幸せを与えてくれた。思えば、15年前に私たちが、別れて別々の道を歩みはじめてから、幾度の危機があっただろう。佐藤さん。あなたは妹をとても大事にしてくれた。そのことに私はとても感謝をしている。ありがとう」
4つ目の扉は開かれた。と、夢の中で、妻は言った。
そういうことか。ついに妻の父と母、そして、兄と妹、4人目の妹が現れるとともに、妻の父親が姿を現した。
青いトレーナーに黒のパンツをはいている。「やあ、娘がお世話になったね」
一度として、一度として、妻がガンで戦っているときに姿を現さなかったのに、なぜ?と佐藤は疑問に思った。
そして、母親もまた同時に姿を現す。赤いスカートに白のワンピース。
「佐藤さん。あなたは、これからも息子です。娘と同じように」
兄は妻によく顔立ちが似ている。
「これからは、私のことを兄と思ってください。兄ゆえに兄。兄の中の兄とね。わっはっはっは。私はね、佐藤さん。妹よりも、あなたが心配だ」
佐藤は会社にも行かずに無断欠勤が続いていた。すでに会社の社長から、クビだと連絡を受けている。お金も底をついてきた。「やあ、やあ」と言って、現れたのが、妻の親族たる彼らだった。
妻の父は言った。
「あなたの妻、娘の故郷にいきませんか?ぜひきてください」
佐藤は、なんとなく、どうでもよかったが、興味をひかれて行く気になった。
「まあ、いいですよ」
話はそこから速やかに進む。
翌日の朝、佐藤は毛状県みやの市の土を踏んでいた。