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空白のイデア(30)

 今はただここにいてくれ、と鈴木は思った。なぜなら、佐藤はすでに抜け殻のようになっている。そして、まもなくN教は解体される。国家の機関によって。その機関はもともと鈴木がつくりあげたものだった。だが、今は鈴木の力の及ばぬところにいってしまった。密接にからみあった現世の理そのものが、その機関を象徴するものだった。

 人の中にチップが埋めこまれている。そのチップは何らかの作用によって爆発して、人を死に至らしめる。恐ろしいことだ。それをその機関が実行し、行っているらしい。この人間爆弾化計画において、鈴木はどのように、この現状を止めることができるか、考えた。埋めこまれているのではないという情報が入ってきた。秘書からの情報、鑑定室からの情報によるとチップとは薬の中にあるらしい。不特定多数の薬の中にチップが埋めこまれて、体内に入っていく。そして、そのチップはやがてなんらかの作用によって爆発する。

 すでに30人が亡くなった。チップの爆発によってだ。人々は恐れている。この世界を。人々は心配している。自分の身の安全を。すでに広く流通した薬そのものを止めるのは難しい。風邪薬くらいであれば、どうとでもなるが、慢性的な薬、薬なしで生きていけない人々にとっては、薬を飲まない=限りなく死に近い となる。

 すでに薬を飲む人々への差別が始まっている。

「なんだ。薬飲んでいるぞ!気をつけろ。近くによるな」

 人々は薬を使わずに(錠剤)を使わずに、いればいいと思ったとしても、現実はそれを上回った。液剤にも、チップが入っていた可能性が指摘された。東京のBという人物は錠剤を数か月の間飲んでいなかった。液剤のみだったにも関わらず、爆発したのだ。

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