クは権力を握った自分を見つめなおす。今や、一国の宰相さえも、クの言葉通りに物事を実行する。
クは試しにオレンジジュースが欲しいと言った。すぐさま、特級の美味なるオレンジジュースが届けられた数少ない国産品である。
あらゆる物事にははじめがあるはずだったが、クの権力にははじめがなく、終わりさえ、見えるはずもなかった。
クはひとりで考える。
(一体、この世界をどのように扱うべきか。私ができることは幼馴染の家を建て直したり、島の人間に恩恵を与えることでもないはずだ。私の名のもとにすべてがひれ伏す状況において、たったひとつひれ伏さないものがあった。それが、私自身だ。私は私自身が大いなる魂とつながっていると知りながらも、私自身を火の中にいれる薪(たきぎ)として、使うことができなかったのだ。
なんという後悔、なんという弱さ、私は私自身の圧倒的な夢を圧倒的な終わりへと導くために自らを大きな海に流さないといけないとクは気づいた。おおきな海に流れていった私は、いずれ海とひとつになって、海の中のひとつの魂となるだろう。そして、生命として、地球とひとつになっていくのだ。わかってくれるなら、私の望みをかなえてほしい。その願いは聞き届けられるのに時間が、かかった。ク自体の肉体が消滅する、なくなる可能性がとても高いからだ。しかし、最終的にその願いは聞き届けられる。
クは海へと帰ることが決まった。東の海に流されて、そのままにされることになった。それがクの究極の望みだと鈴木も佐藤もジェイクも知ったのだ。