佐藤は言い続けている。なにか、この世界が、異質なものに、変わりつつあると。
「私は私である。しかし、すでに私ではない。この肉体に宿る精神は、すでに晴れやかな大地へと降り立っている。何を知っているのか?それとも、何を知らないのか?私はゆるやかな生を生きている。すでに私の他人のために使える部分は、どこにもない。今、私はひとつの終わりへと至っている。同時に、それは新たな始まりとしても、ここに今ある。私は何の役にも立たない人間になった。ついに、至ったのだ。この何者も閉ざされた門を開けたのだ。門はすでに開かれ、私たちの前には、無限の地平が広がっている。まして、この世界、私のような愚者が、新しい門出を迎えようとしているのに、何をあなたは恐れつつあるのか?」
佐藤のもとには200人ほどの人々が、集まった。すべて、自らの人生、自らの能力に、絶望を抱き、自らの社会性を閉ざしたものたちだ。人々は言う。
「私はすべてに絶望している」
「私はなにもかも捨て去る。あらゆる縁もすべて」
「変わりのない私は、有用というハードルをこえたのではなく、すでにハードルをとりのぞいたのだ」
人々は鮮やかな世界から、人々の始まりは、佐藤の幻影を見続ける。
現実にいる佐藤は一人の男。彼が妻を亡くしてから20年がたっていた。