背広姿の男女がやってくる。肩には道具をいれるための袋を持っている。道具を取り出して、作業を始める。トンカチで、トントントンと音をたてて、作り上げていく。お互いの持ち場、お互いの作業場にそれぞれが有機的に入って、有機的に機能しているようだ。ふぅっとひとりの背広の男が息を吐く。
「なあ、どうしてもここじゃないとダメなのか?」
佐藤は聞いたが、誰も何も答えない。彼らは雇われて、ここに、しかるべきものを作り上げるために来た。佐藤とは何の関係性もない。佐藤は妻との会話を思い出す。
「昔の王様は、どうやってトイレに行ってたかな?」
「立ち上がって、普通に王様専用のトイレに行ったんじゃない?」
「専用のトイレは豪華なのかな?それとも、そんなに仕官たちと変わらなかったかな?」
妻は少しクビをひねって、手をあげる。「はい。どうぞ」
佐藤があてると、妻は少し得意げな顔で答える。
「王様のトイレは特別なものだった。とても神聖なものだった。なぜなら、不浄と浄をつなぐ役割を果たしていたから。彼らはみな知っていたのです。王が決して不浄の側に立ち入らないようにするために神聖なトイレを作った。そのおかげで、国は栄え、王は栄えたのだから」
それで会話は終わった。
その思い出が今なぜ、このタイミングで生まれてくるのかもなんとなく、わかる。
鈴木はすでに背広姿で、釘を打っている。電動の機械でジェイクは鼻歌をうたいながら、作業を行う。そんな光景を思い浮かべたりもした。だが、決して、現実にはならない物語だ。
「いいね。いいね」
作り上げるたびに響く。出来上がっていくたびに響く。声はどんどん大きくなっていく。
佐藤は一人何を作っているのか、知っている。
佐藤の心の中にある大事なもの、かけがえのない物語、だ。