佐藤は感じている。この先の未来が、どこへ向かっているのか?
鈴木はすでに大きな力を持っている。それでいて、繊細な心をどこまでもあわせもつ。誰よりも純粋な心とともに。「見て、ほら、カラスがいるよ」ふと、父に言った過去の自分を思い出す。子供の頃の自分だ。あれほど無垢だった私。
「鈴木さん。あなたは、どうして、そんなに純粋なのか。私には、わからないけども、それがあなたの他にみない特性なのかもしれない。いわば、天賦の才というやつだろうね。つまり、あなたの限りない才能は、その無邪気さと純粋さに彩られた絵画のようだ」
鈴木はにこやかに笑う。「私はね、佐藤さん。あなたのために何かしたい。その心はずっと持っている。これを愛といえば、それまでかもしれないが、もっと違う何かな気がする。一体、この感情はなんだって?私にもまったくわからない。予想さえつかないようなこの感情の前に私はあなたと一緒になって一夜を過ごした、そのことだけで、私は天上にものぼる気持ちだ。あの人が振り向いてくれたと信じたあの日から」
佐藤もにこやかに笑う。「妻とは愛し合っていたのですね。わかります。だんだんと妻があなたにひかれていったことも、あのまま病気にならなければ、あなたのもとに妻が走っていたことも、理解しています。あなたは純粋でありながら、強い。強靭な体力と純粋な意志力と子供のような無邪気さを持っている。そんなあなたを妻が愛さないはずはない。妻は一人の完成された女性でしたからね。私が一人の完成された男性であったのと同じように」
二人は肩を組んで、詩を歌う。古代の古い古い詩。友情への賛歌とこれからの未来への熱い思いをうたいあげている。足をあげて、右手をあげる。踊り出す二人の周りを佐藤の妻ヨラギ家の人々がかため、一緒に踊り出す。そう。ついに祝祭のときは、来たのだ。二人の和解はおおいなる大地の踊りとともに、世界に影響を及ぼすことだろう。この世界が果てるまで、静かに静かに。
そんな二人と見つめる4つの目。ジェイクとTが双眼鏡で見ているのは、ヨラギ家の様子。
「ジェイク。問題は複雑になってきた」Tが言う。
「Tさん。俺は進まなきゃいけない。あの日を忘れるために」と、ジェイク。
「そのことはもう終わったと。まだダメなのか」と、T。
「ダメだね。俺はもう知ってしまった。ある種の真実を」ジェイクは双眼鏡を置いて、車に乗る。エンジン音とともに、車は街へ降りていく。
(さて、佐藤と鈴木は和解した。これから、始まるぞ)ジェイクはひとり思った。