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← トップページへ戻る 【小説、詩】

 空白のイデア(1)

 奇妙なやすらぎを感じる。

嘘のない空洞。私はあなたを見る。

何も見ていないだろうこの目で。

さて、およそ300年前何が起こっていたかは、知ることはできないだろう。

が、この地点において、今知ることが、できることはある。

例えば、周りに何があるか、とか、周りにどんな人がいる、だとか、私がどんな気持ちだとか。

今私は自分の部屋にいて、パソコンでYOUTUBEを見ている。

仏教系の僧侶のような人が、人の悩み相談に対して、懇切丁寧に答えているというものだ。

私は、僧侶の言葉を悩み相談者以上に(?)自分のこととして、とらえて、妙に納得しているのだ。

ここにある大きな流れの中に私は乗っているのか?この大海に浮かぶ船に乗っているのか?

私には、わからないけれども、スカイツリーは銀色の胴体で私を見つめ続けている。

この最初の一歩、とても小さな一歩だと思う。だけれども、私は妙な確信と妙な力を感じている。

そのことは、まぎれのない事実である。

私が、いかに、くだらない人間であろうと、くだらない人間でないと自分自身感じていることは、まぎれのない事実として、信じる。

 ここから、ひとつの小説が始まっていく。

 佐藤は、まだひとつのリンゴを買っていなかった。あれほど、忘れないようにメモをしていたのに。もう一度スーパーに戻って買おうか、迷っている。

 すると、大きなトラックがやってきて、とまった。

そしてトラックの荷台が開いて、小市場へと変わっていった。

「りんごはありますか?」

 佐藤が聞くと、トラックの運転手兼店主はにこやかにこたえる。

「ああ、あるとも、今朝仕入れたばかりの青森県産のうまいやつがね」

 この言葉を聞いて、佐藤は嬉しくなる。さっきまで自分のダメさ加減を呪っていたのに、今では、自分の幸運さに飛び上がって喜びたいくらいだ。

 店主にりんごを3つ頼む。買いすぎだが、青森県産で、しかもうまいやつと聞けば、買わざるをえない。

 店主は丁寧に紙でりんごを包むとシャレた袋に入れてくれる。猫のキャラクターがほっぺたをふくらませている絵が描いてある。ユニークだなと佐藤は感じる。

店主は「ありがとうございまーした」と言って、他の品の準備を始める。近所からは、いつも買っているだろう客たちが、少しずつ出てき始めているようだ。

 うん。今日はついている。佐藤は改めて、感じる。いつもは30分待つ電車も、今日はたまたま時間があって、駅についてすぐに出発した。

 駅の構造を思い出す。あの駅は、2つのホームが両端にそなわっていて、それでいて、駅員室はふたつあるんだ。なぜなら、ひとつ駅員室がとても狭くて、今では、人が入りきらないからだ。

 ようやく家について、テレビをつける。夕方のニュースでレポーターが大きな声をあげながら、お城の中を歩いている。さあ、~でしょうか?クイズ形式になっている。佐藤は、考えるのをやめて、奥にいるだろう妻を探した。だが、妻はいなかった留守にしているらしい。

 妻の明恵は30代の前半である。5年前に佐藤と明恵は結婚した。ふたりの間に子供はできなかったが、二人は仲よく暮らしてきた。

「ただいま」

明恵が帰ってきた。

「おお。よおよお」佐藤はうれしそうだ。

今日がいかに運がいい日かというのを力説すると明恵は「あなたの日ごろの行いがいいから」と言って、食事の準備を始める。

 佐藤は自分の部屋に入って、パソコンをつける。お気に入りのライバーが放送をいつもしている時間なのだ。その日の放送は、ゲーム枠だった。

 昔のRPGゲームを顔出ししてやりこんでいる放送。

佐藤は、そのライバーが特に好きでもなかったが、特に嫌いでもないので、見続けている。

 なんだかんだ、楽しめるというよりは、落ち着くといった感覚である。

 ふと、ゲームの放送でライバーがため息をついた。

どうしたのだろう?と佐藤は、不思議に思った。あまり、そういう表情を表に出すライバーではない。いつも、はきはきとよどみなく、しゃべるタイプだ。このライバーも、放送疲れかもしれないな、と佐藤は思って、さっき家に帰る前に買っていた炭酸飲料を一口飲む。うまい。うまいので、もう一口飲む。

 「あなた!あなた!」

 明恵の大きな声がする。あまり大声を出さない妻だけに、何事か?と佐藤はリビングに出ていく。すると、玄関には見知らぬ男が立っていた。

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